タイトルなし
妙な多幸感。
間違いなく、しばらく会えなかった彼と、少しだけでも話ができたからだ。
庇護を失い、心の安全基地が揺らいで、彼がいなくても生きていけるように親離れをしなければと、諦めと喪失感を受け入れようとしていたけれど、
たったほんの少し、言葉を交わして、それだけで単純極まりない私の心には、小さな灯火が点るのだ。
何度心の中で呼んでも、空虚に吸い込まれていくだけだった彼の名が、今はきちんと、私の心の中に点っていて。
我ながら、単純でいじましいと思う。
忘れられなんかしない。
失って生きられなどしない。
それでも。
大丈夫。
忘れないし。