スペインの宇宙食
基本的に、ベースとして精神が不安定で、思考は内に内に入っていき、そういう性格をしていて病まないはずがないわけだけれど、
それでもなんとか、メンヘラで他人に迷惑をかけることもなく、ガチな精神疾患認定もされず、死ぬこともなくサバイブしてきたわけでして、
その幸運な理由のひとつに、「スペインの宇宙食」との出会いがある。
高校時代、家族との折り合いが大変悪く、いま思えば、何度か解離が起こっていた頃。
耽美な語り口、ドラマティック過ぎる氏の幼少期。
そして、菊地氏自身が不安神経症を患っていたこと(と、後に精神分析やら整体やらで完解する)である。
何度も何度も読んだので、手に触れる部分は色が変わり、表紙は毛羽立ってかさかさになってしまった。
何度読み返して癒されただろう。
食事、音楽、映画、フェティシズム。
猥雑であり、しかし下品さのない(意図的に出そうとしたりしてるけど)氏の文章は、そのときの私をうっとりさせた。
そこからフロイトをかじってみたり(したけど感想は「なんでも性的とか言ってんじゃねーよ!」ですw)、ジャズを聴いてみたり(したけどやっぱり私はドリカムが好きだよ)して、
そしてなんとか、「混沌とした己をそのままに生きるという諦め」を会得した気がします。
受容したのではなく、諦めたという表現の方が合っている気がする。
不思議なことに、その後、私は私の先生と出会って、やっと人生が廻り始めて、そしてそれからもう一度「スペインの宇宙食」を読んだら、あの頃のような陶酔は得られなかったのだ。
高校時代の私に、確かにあのときに出会うべくして出会った本だったのだと思う。