私の神様(5)
私が、愛着の獲得をやり直している頃、その姿は端から見れば異質だったのだと思う。
今思えば自分でも十分分かる。女子大生と妻子持ちの指導教官が、仕事や授業の準備とはいえ、常に行動を共にしていて、頻繁に研究室で二人きりであるというのは。
誓って、何もやましいことはなかった。
正確に言えば、私のスタートはほとんど恋心であったと思う。こちらを振り向いてほしいという気持ちがあった。私のことを見てほしいと願っていた。言葉にこそしなかったが。
そして、彼はそのことが分かっていたはずだ。彼はその私の気持ちを、ただ認めてくれた。好意が駄々漏れている私に、他の学生と同じようにただ当たり前のようにそのまま接して、その好意を、受け取りも、拒絶もしなかった。
それは、残酷で優しいことだった。絶対に報われない片思いが許されているということは。
そして、少しだけ特異な師弟関係は、研究や仕事の中で、バディのようになっていき、
大学において周りの状況が大きく変化し、トラブルに巻き込まれていく中で、運命を共にする仲間のような関係に変化していった。
好きだ惚れたなどという気持ちではなく、絶対的な信頼に変わっていた。
だから私たちは男女の関係にはならなかった。
なる理由がなかった。
私は彼に父性を求め―まぁそんなこと本人には言ったことないけど―、彼は私を、少し年の離れた妹のように思っていた(らしい)。
何かを。自分の一部分を共有しているような感覚が、きっと私だけではなく彼にもあるのであろう。