書くこと
私はずっと、何か焦りを抱えながら生きてきた。
ずいぶん少なくなったとはいえ、今もそうだ。
そしてその焦りから、私はずっと文章を書いている。
表現しなければ生きていけない。
私の世界と私のいる世界を描写すること、すなわちそれが存在の手立てであり証明だと思っていた。
私にとってその時、書くことは愛することで、許すことで、祈ることで、思うことで、留まることで、進むことであった。
油断をするとあっという間に過ぎて行ってしまう時を、私はつなぎとめておきたかった。
どんどん薄れていく記憶の中で、せめて忘れたくないことだけは、書き留めておく必要があった。
油断をするとあっという間に忘れてしまう思いを、私は覚えておきたくて書く。
油断をすると立ち止まってしまうこの身を、私は奮い立たせたくて書く。
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愛さなければ生きていけないのは愛されなければ生きていけないから。
ひとさじのよろこびとひとさじの悲しみがあるなら、その価値は同じだと、なぜ人は言わないのだろう。
全ての心の動きを書き記せたらいいのに。
ペンを握る私の手は無力で、
けれどあなたを抱きしめるためにある。
私が私を許せる日が来たなら、その先にある景色を、見たい。
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今も、私にとって書くことは、息をするように自然なことである。
今まで狂わずに生きてこれたのは、そのおかげである。
表現することができなければ、私はとっくに耐えられなかったはずだ。