私の神様(2)
口が裂けても本人には言えないわけだが、
件の人は、私の中では神様のような、絶対的なものになってしまっている。
そんな重いこと言えるわけもないけれど。
初めてちゃんと会話をしたその日に、
私は彼の虜になった。
当時、彼の見た目はなんだかチャラチャラしていて、
私は彼のことを、自分には関係のない人種だと思っていた。
けれど、初めてまともに会話をしたその時に、
彼は私が当時抱いていた、うまく説明もできないような夢を、
否定することなく聞いて、褒めて、認めてくれた。
そして、つまらない飲み会をやり過ごす間、私に昔話をしてくれた。
今思えば、なぜ、一介の学部生にそんな話をしたのかはわからないが、
私の知らない、過去の彼の話は、まるで小説のようで、私は聞き入った。
その日が終わる頃には、私は彼のことを信用できる大人だと、認識を改めていた。
ただ、野生の本能のようなもので。
けれどその本能は正しかった。
その3年後には、彼のたった一言で、私はそれまでの自分の過去をすべて赦し、
求めていた愛を受け取ることになるのだから。